ここ数ヶ月、気づかないふりをしていたが、自分の体温より温度差があるものがしみてしまう。硬いものを噛むと痛みがある。
虫歯だ。
思い起こせば、1年前。
決死の覚悟で、歯医者の門を叩いた。
そこまでにたどり着くために、様々な過程があった。
予約の電話を入れようと受話器を持つが決心がつかず、またそれを置いてしまう。
歯科の前をうろつき、結局入れなかったこと十数回。
恵まれた環境にあり、歯科がものすごく近い場所にある。職場の仲間達からはからかわれ、最後はあきれられ…
今日こそは。と意を決してはみたものの結局行かず、オオカミ少年状態。
なぜ、そこまでになったのかというと…21か2の頃、普通に歯科治療を受けていたのだが、その日の麻酔時に急に頻脈がはじまり、心臓が体か出てしまうのではないか?!くらい激しく、頭の中がフワァ〜っとした感じになってしまった。
その旨を伝えたら、歯科医も少し焦ったような顔で血圧計をどこからか探してきた。それから10分くらいだったか、頭を下げて休んでいた覚えがある。
それ以降はというと、歯科で麻酔をするたびにその反応が起こり、それが怖くて歯科から足が遠のいてしまったという訳。
しかし、歯も大事にしなければ大病をまねくこともあるから、これ以上放っておくことはできない。
そこで意を決した。
病院内の歯科なら何かあっても、処置が早くしてもらえるだろうということで、ついに、ここまでたどり着いた。
呼ばれて中に入ったまでは良かったが、緊張のあまり、先生の丸イスに座ってしまって、歯科関係者から笑いを取った。なんて言ってるけど、決してウケ狙いではなかった。というか、そんな余裕はない。
それくらい緊張しているということが先生にも伝わったらしく、不安を話すと今までにない神対応で、本当にゆっくりと少しずつ、さぐりながら麻酔注射をしてくれた。
緊張で冷たくなった手を握ってくれて、歯科助手さんが温かいタオルを持ってきて、自分の手を温めてくれた。
自分1人に、本来の患者何人分の時間を費やしてくれたんだろう。
まさに、大慶至極。
そして、麻酔薬のアレルギーではなくて、迷走神経反射(生命を維持しようとする正常な反応だが、過剰に刺激され自律神経に失調をきたす場合は、血圧の低下や心拍数の低下が起こる。)で身体に変化がおきていることが分かった。
あ〜、そろそろ歯科行かなきゃな。
どうせ寝ている間に、奥歯噛み締めているんだろうな。
仕事中も知らぬ間に、上下の歯をこする癖がある。良くないよな。
でも無意識にしちゃうんだよな。弱ったもんだ。
うさぎ一家、今日も柱やら壁紙などをカリカリやっている。
床には見たくない何かの破片が、あちこちに落ちている。
『あーっ、そこをかじるのだけは勘弁して下さい。』
少し大きな声を出した自分に、一斉にウサギ達が振り向く。それも一瞬だけ。
また、黙々と作業を始め出した。
片付けなきゃ…
いいなぁ、丈夫な歯を持っていて。
何がそんなに気になるの?