乳がんは、女性のがんの中で最も患者数が多く、12人に1人がかかる身近な病気。
検診を受けるメリットは、乳がんで亡くなる危険を減らすことで、国は40歳以上の女性に2年に1回、マンモグラフィー検査と視触診による乳がん検診を推奨し、市区町村が公費助成をしている。
しかし、乳がん発症者の少ない30代や、まれな20代が検診を受けると、過剰診断や偽陽性・被曝のリスク・精神的な負担など、不利益だけを受けてしまうことが少なからずあるという。
マンモグラフィー
若い人が乳がん検診を受けることの主な不利益とは?
若い人は乳腺密度が濃く、マンモグラフィー検診では【偽陽性】の発生が増えがちで、
確定診断までの不安は、精神的に相当なストレスを受けてしまうだろう。
そして偽陽性だった場合、不必要な検査や治療を受けることになってしまうこともある。
マンモグラフィーはどのような検査か?
上半身裸になって乳房撮影装置の前に立ち、片方ずつ乳房を全体が写るように前に引っ張り、乳房を圧迫板とフィルムの入った板ではさみ、薄く延ばして撮影装置の検査台にのせ、乳房を圧迫筒で上下から圧迫する。
検査時には個人によって感じ方は違うが多少の痛みが伴う。
しかし、撮影時間は1秒もかからず、圧迫は数秒間だけ。
できるだけ乳房を薄く延ばして撮影した方が、組織の重なりが少なくなり、乳腺の状態がより鮮明に写るのでこれは我慢しなくてはならない。
マンモによる被曝の心配は?
マンモによる放射線の被曝量は一方向当たり0.05~0.15mSv(シーベルト)程度。
影響はゼロではないのでむやみに検査を受けるのは避けたいが、私たちは年間約2.10mSvの放射線を自然界から浴びているので過度な心配は不要となる。
検診の精度は医療機関で違う⁉
施設選びの際は要精検率が何%か問い合わせてみるのも、不必要な精密検査を受けずに済む方法。
精検率が少ないほうが、検診精度が高いというわけだ。
乳腺密度
デンスブレスト(高濃度乳房)
自治体などで行われる検診で、マンモの結果しか書かれていない場合は、医療機関に自分の乳腺密度を問い合わせてみるといい。
もしデンスブレストなら、従来のマンモに超音波を加える検診を受けることをお勧めする。
デンスブレストの女性の場合、マンモに超音波検査を加えてチェックすることで、がんを見つけやすくなることが、日本人約7万人を対象に行われた最新の大規模研究でわかっている。
参照:東北大学大学院医学系研究科 日本医療研究開発機構
脂肪が多く、乳腺密度が低い脂肪性乳房であれば、マンモでは乳房は黒く映るので、白く映るしこりがあれば見つけやすい。
ところがデンスブレストでは、乳腺もがんも白く映るためがんを見つけにくい。
マンモグラフィーの長所は、触診や超音波でわからない乳がんでも発見でき、石灰化の性状や範囲がわかる。
しかし、その反対に痛みを伴い、 年齢・乳腺量の個人差により詳細な診断ができないことがあり、妊娠中またはその可能性がある時は、基本的に検査できない。
乳房超音波検査(エコー検査)
名古屋大学医学部付属病院 乳腺・内分泌外科:乳腺-診断-乳腺超音波検査
エコー検査の長所は、数ミリの小さなしこりを見つけやすいく、しこりの性状がわかりやすい。
妊娠中でも可能で、乳腺が豊富でも病気を見つけられるが、細かい石灰化や性状・範囲は確認できない。
乳がんの60%以上はセルフチェックによって発見されている
まず何よりも大事なのは、セルフチェック(自己検診)。
家族性・遺伝性乳がん
ただし、家族性・遺伝性乳がんのリスクがある方や、自覚症状がある方は、迷うことなく医療機関で受診してほしい。
乳がん患者の約8割は家族歴に関係なく発症しています。しかし血縁者に乳がん、卵巣がんの患者が複数いる場合、乳がんになりやすい体質を受け継いでいることがあります。これを「家族性」乳がんと呼びます。また、遺伝子の変異が判明している乳がんを、「遺伝性」乳がんといいます。【中略】
遺伝性乳がんの可能性が高くなるのは「ハイリスク」チェックリストのいずれかに該当する場合。関係する遺伝子は乳がんだけでなく、卵巣がんの発症にもかかわります。
ハイリスクチェックリスト
検査結果は100%ではない!
ほとんど健康な人たちの中から、わずか数人のがんの人を見つけ出すための検診と、自主的に異常を訴えに病院へ行った人に対して行われる『乳がんの疑いがあっての検査』は別物である。
乳がん検診の場合、発症リスクの低い人が検診を受けることで、過剰診断や偽陽性・被曝のリスク・精神的な負担などの不利益が、検診による利益を上回ることさえありえる。
また、残念ながら検診を受けたがために、結果が不正確で発見が遅れてしまったという人も少数派だがいる。
これは、検査をする際に患部が上手く写らなかったことや、読影をする医師の見逃しなどもあるので、検診結果が『異常なし』や『経過観察』であっても、自分の身体にわずかな異変を感じたら、検診まで待つのではなくて、すぐに医療機関へ受診をしてほしい。