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20代で甲状腺がんになってしまった女。その4

手術当日

何度頬をつねろうと痛い。夢ではない。

とうとうこの日が。

 

抗生剤のアレルギーテストをして、浣腸されて、便が透明な水になるまで看護師に確認してもらう。

子供がいるとはいえ、まだ20代。

他人にそれを見せるというのは、辱めだった。

 

まだ患者の処置等に慣れていなそうな、同い年くらいの看護師に鼻からチューブを入れられて、痛くて痛くて涙がぼろぼろ出てきた。

「ごめんね。」と気の毒そうに言いながら、うまく入らないチューブをどうにか胃のほうまで押し込みながら、聴診器をあて、確認していた。

 

いざ、出陣

部屋のお姉様方が「がんばってねぇ~。」と声援を送ってくれた。

鼻の奥が痛すぎて言葉が発せないのと、ストレッチャーでの移動だったので、手を挙げて答えることしかできなかった。

 

旦那と二人っ子も来ていたけど、ここでやたらなこと言うと縁起でもないと自粛し、子供が可哀想だから、手術が終わるのも待たなくていいとお願いした。

しかし、緊急時の為に旦那はいたようだが。

 

入室

金属色がイメージに残っている部屋。

薄暗く殺風景な雰囲気で、肌寒い。

 

部屋の中央辺りに運ばれ、寝台に移されてと、記憶のある時間はとても短いが、物凄く嫌な場面だった。

 

やがて担当医と麻酔科医が現れ、

「頑張りましょうね。」

「10数える内に眠ってしまいますから、それでは薬を入れますよ。」

 

『1、2…』・・・

 

手術終了

「たべこさーん、だべこさんっ?!」

「起きてくださいっ。」

遠くの方から声がして、目が覚めた。

頭の中がまだぼーっとしている。

「だべこさん、無事終わりましたからね。」

 

それからまた眠っていたのか、ただ頭が働いていなかったのか分からないが、自分的に本当に覚醒した時には、もう観察室だった。

 

暗い部屋の中に、ポータブルレントゲンが現れ、胸の写真を1枚。

そして、次にはぬぅーっと外科医が現れ、「どう?大丈夫?」と言ってくれたが、熱が出てしまったようで、脇の下に古い点滴が凍らせてあるやつが挟んであった。

 

『どれくらい時間かかったんですか?』

手術後、初めて声を出したが、息でしゃべっているようなもんだった。

「2時間半くらい。少し、予定よりもかかっちゃったけど、とり切れたからね。」

『あれっ?声が。』焦る自分にドクターは、

「今それだけ出ていれば十分。」とのことだった。

 

こんな声でよく通じたな。

風邪をひいて咳が何日も止まらず、声がかすれてしまったのを5倍したくらいの感じ。

そういえば、術前の説明で反回神経に傷が付いてしまうか、がんが浸潤している可能性があれば、その部分は切らなきゃならないから、嗄声になってしまう可能性があると言われていた。

 

それよりも、喉の異常な痛みと身体が辛いのとでそれどころではなかった。

 

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