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20代で甲状腺がんになってしまった女。その5

生還いたしました

術後、午前中には元の病室に戻り、お姉さま方の熱いねぎらいの言葉を受けた。

それに応えるべく、手を挙げ笑顔で小さく会釈をする自分。

首の大げさなガーゼを見てもらえれば、声を出さずとも皆、察してくれた。

 

鼻から入っているチューブが、どこをどうやっても慣れることはなく、ただただ苦痛でしかない為、看護師に事情を言って、どうにか抜いてもらえないかと、先生に頼んでもらった。

まだ、食事がろくにできない自分に、「胃酸で気持ち悪くなってしまうかもしれないけどいいのかな?」と先生。

 

『いいです。』

《気持ち悪さに嘔吐するようなことがあったら頸が死ぬよな。》とも考えたけれど、それ以上に、鼻と喉をひりひり・ズキズキとさせるこの管が、一刻でも早く体内から無くなってほしいという思いでいっぱいだった。

すると、先生がずるずると管を抜いてくれて、清々した。

 

そして翌日には導尿カテーテルが取れて、点滴台片手にトイレへ行くこともできた。

ただし、手術時の気管内挿管の喉の痛みと傷口の痛みが耐え難く、傷口をかばうと頭全体も痛くなってきて、横になっているより他はなかった。

 

傷口

しかし、ベッドに横になっていても、いざ一大イベントが済んでしまうと、テレビを見ることくらいしかやることのない自分には、余計なことを考えてしまう時間が、有り余っていた。

 

今まで担当医は、自分にはっきりと〝あなたは、がんです。〟と言ったことはなかった。

しかし、そうだと察することができるようなヒントはかなり言われていたから、サブリミナル効果?で、〝自分はがんなのか〟という認識は頭の片隅にはあった。

でも、〝ひょっとしたら悪性のものじゃないのかも〟という淡い期待も少なからずあった。

 

できることなら動きたくはなかったが、尿意の我慢も限界で、重い腰ならぬ重い頸をあげて、能楽のすり足のようにトイレへ向かった。

やっとの思いで用を足し、洗面台の鏡に映る自分をみた。

やはり気になるのは首元の傷。

ガーゼを折り重ねてあるやつを、テープで貼ってガードされているだけなので、指でめくれば容易に傷口を見ることができてしまう。

 

少しの間躊躇したが、意を決して見ることに。

 

頸の付け根前面にぐるっと等間隔に止めてあるホッチキス。

その下には所々、渇いた血が付いていて、10cm以上はある切開傷。

リアルだなー。昨日の今日で、傷がパッカーって開いちゃったら本当にシャレにならんな。

良性腫瘍だったら、傷もこんなに大きくはない。

"やっぱり悪い物だったんだな。"と、そこで再認識した。 

 

この病気、切っただけで済むのかな?

思ったのと同時に血の気が引くのがわかった。

 

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