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旦那が亡くなって、少しホッとしたのを思い出した。中編

 

ー前書きー 

2012年10月、旦那が大腸がんで亡くなった。

自分より11年先輩だが、それにしても若すぎる死だった。

月日が過ぎるのは早いもので、光陰矢の如し、今日に至るまでがあっという間だった。

 

今のところ、毎日思い出さない日はない。

生身の身体がないだけで、目には見えないが、存在感はそれなりにあると思う。

毎晩の晩酌の乾杯もしている。

だからと言って、自分が霊感があるのかと言えば、全くもってない。

 

正直な気持ちというか、今の感情に一番近い表現をするなら、

「旦那は長期出張へ行っている」

と言ったところかな。

未だに死んだことが信じられないっていうんだから、どうしようもない。

焼き場へ行って骨になったのを、この目で見たのに。

 

がんが分かってから僅か二年半で亡くなってしまった。

 

 

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がんだと分かった時には最終段階のステージ4

肝臓に転移があった時点で、遠隔転移を認めるという事でステージ4。

という事は、

とりあえずはイレウス(腸閉塞)を起こさないように、大腸の問題の部分を切って腹が痛くならないようにする・・・

今更だが冷静に考えれば、QOL、まさに終末期の患者に対しての緩和ケアの為だったのかなと。

 

医療的なQOLとは、

quality of life:心と身体の苦痛を和らげ、生活の質を上げる。

そして、身体的・精神的な質だけでなく、本人を取り巻く環境や社会的・経済的活動の質までもが含まれている。

 

 

2010年5月下旬開腹手術

当初、内視鏡検査の所見では、がんが浸潤して十二指腸あたりまで喰われているかもしれないという事で、複雑そうな術式を丁寧に先生が説明してくれた。

 

当日、看護師と一緒に車いすでオペ室へ入っていく旦那。

余裕気に片手を挙げて「行ってくらぁ」と一言。

本当はビビりなくせに強がっていた。

 

「待ってるよ」と普段通りに返事をしたけれど、

心の中では、「テレビの中の世界じゃないんだ・・・」

という不思議で複雑な感情でいっぱいだった。

 

しかし、どうにか自分が治して見せる!

と、医者でもないのに変な使命感を抱いたのを覚えている。

「お医者様に治してもらう」ではなくて、「自分が治すっ!」という異常な思いで奮い立っていた。

 

そしてオペ終了後先生から、

「いざ腹を開けてみたら、目に見える範囲での浸潤はなく、結腸を約30センチ切除する(細かく言えばリンパ節郭清などあると思うが)だけで済んだ」

という説明を受けた。

あっ、切除するだけで済んだなんて言ったら、本人に悪いか。

当の本人にしてみれば、大事(おおごと)だったのだから。

 

説明が終了したのと同時に、先生が切除した旦那の大腸を自分に見せた。

それは自分にとっては非常に苦手分野な物だけれど、先生が容赦なく見せてくる。

リアルなそれに、自分が倒れてしまわないようにと気を張り詰めるだけで精一杯だった。

 

 

抗がん剤:化学療法を始める

 無事オペ室から生還した旦那。

 

腹からはドレーン【出血や消化液の漏れ、縫合不全などの情報を得て術後合併症を早期に発見する・体内からの浸出液や血液を排出させることで感染症などを起こさないようにする・膿瘍などを排除することで炎症を抑える】がぶら下がり、

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出典:看護師転職サイトナビ 2017年版 | 高給与・好条件・お祝い金・都道府県別|現役看護師による転職サポートサイト

 

背中からは硬膜外麻酔【硬膜外腔に1mm程度の細い管:硬膜外留置カテーテルを留置して、背中に絆創膏でとめておくと、仰向けになった状態で何度でもこの管を通じて局所麻酔を入れることができる】が生えていた。

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出典:くまもと麻酔科クリニック,熊本麻酔科クリニック,ペインクリニック,夜間診療

 

術後三日間くらいは相当腹が痛かったと見えて、寝返りを打つにもそれこそ命がけだったらしい。

本来麻酔も早く抜ける予定だったが、あまりの痛さに長引いて、師長さんに残念がられていた。

 

そして術後体力が回復してきた二週間後、30分程度のポート【血管内に薬剤を確実に注入するための医療機器】造設術を受けて、化学療法、いわゆる抗がん剤治療を開始した。

二週間に一回、一回の時間は48時間。

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出典: 国立がん研究センター がん情報サービス トップページ

 

誰とでも気兼ねなく話せた旦那は、格好の「看護学生研修場」となった。

抗がん剤を勉強してきたと見える学生さんが、旦那の体調を心配する。

学生:「吐き気とかありませんか?」

旦那:「ん?特にないな~」

学生:「え~っ?強い薬だから吐き気とかあるはずなんですけど」

・・・

聞いている自分が具合悪くなってしまった。

若い娘に罪はないが、抗がん剤というデリケートな部分に、さらに追い打ちをかけるようなワードを盛ってくる学生さん。

まぁ、旦那が気分悪くしていないならいいけれど、ナーバスになっている者達への配慮を勉強してもらいたいと心から願った。

 

それからの毎日、実習時間にはウノをしたりくだらない雑談をしたりと、学生さんには全く勉強にならない日が続いた。

つづく

 

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