どうしても許せない人がいる。
この器の小ささは、いくら歳を食っても治しようがない。
自分はもう数十年前に善い人をやめた人間なので、毒を吐くことはしばしばある。
ところがね、この期に及んでもいい人に思われたいという欲が出て、ストレートに人の悪口を言いたいのだけれど、結局冗談交じりで済ませてしまう情けない自分。
しかし、自分の悪口なのだか冗談なのだかどっちつかずな話を聞かされている人たちは、結構まんざらでもない様子。
言い出しっぺの自分よりも熱く人の陰口を言い出す始末で、みんな共鳴し合っている。
みんなの心がカツカツしている今のご時世、きっとどこかで、小さな刺激を求めあっているのだろうな。
ほら、あそこに。
自分の憂さ晴らしのためだけに、理不尽な理由で部下を怒鳴り散らしている人がいるよ。
その現場に居合わせている人間は、何食わぬ顔で仕事をしているよ。
ほら、あそこにも。
他人の家庭事情を根掘り葉掘り調べつくして妬んだり、または優位に立った気になっている人がいるよ。
そしてそこには吸い寄せられるように近づき、同調し合う悪い虫がいるよ。
他人の気の毒な話に同情している素振りを見せているけど、猿芝居。
口元のゆるみが隠せていないよ。
あっ、あそこにも。
他人から知り得た情報を、さも自分が知っていたかのように手柄を立てている人がいるよ。
それが正しくなかったときは、咄嗟に誰かに責任転嫁をしているよ。
偉い人に媚びるのは大嫌いと言いながら、そう言ってた本人が一番早く寝返っているよ。
次から次へと自分の気に入らない人を見つけては、年上だろうが先輩だろうが攻撃しているよ。
いざ、自分の非を伝えられると、言い訳ばかりして反省しない人がいるよ。
ねっ、神様。
今の人間界はこんなに腐ってしまっているのですよ。
あんた何様のつもりだ。
口ばっかりで、いつも人任せで面倒臭いことはしないくせに。
間違ったっていいでしょ、それから学ぶことがあるのだから。
だからね、言い訳ばかりするな見苦しい。
素直に「失敗しちゃった、気を付けます」でいいんだよ。
少しは他人に優しい気持ちを持ちなさいよ。
みんな我慢しているのが分からないのか?その横柄な態度を。
それまで虚勢を張れる自信はどこから来るんだ?
何がそんなに偉いんだ?
・・・言ってやった。心の中で。
ありのままでいいのに。
『さっきのその言葉は言っちゃダメだろう。その人はあんたの為に頑張っているんだから。』
『自身がないんか?他人がそんなに羨ましいんか?』
『本当にその人が嫌いなのか?どこが嫌いなのか具体的に言えるのか?』
『案外他人の嫌なところ、自分の知らない本当の自分に似ているのかもしれないぞ。』
『あんたが散々悪口言っている相手は、普段から結構あんたを助けてくれている人なんだよ、知らないだろうけど。感謝の気持ちを少しでも持とうよ。』
『無視をするだけして、あんたは憂さ晴らし出来ていいだろうけど、されている方は?他人にまで自分の好みを強要するのはやめろ。』
『何があったか分からんが、無理して自分を大きく見せることはないんだよ。そのままのほうが数段に良い。』
『プライドは捨てよう。そうすれば自分が何より一番楽になる。』
・・・って、わがままな自分に言ってやった。
穢れのない子