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たべこ一家とうさぎ一家の何気ない日常

精神障害者保健福祉手帳2級所持者A氏 VS. 自分。私だって無実だ!

 

職場の一応先輩、コネ入社のADD(注意欠陥障害)50歳のA氏。

スタンダードな姿勢は軽く首をかしげたような前傾姿勢で、正にレインマンのダスティン・ホフマン。

かと言って自分の知っている限りでは、サヴァン症候群のように特殊な能力があるようには見えない。

 

 

 出典:「レインマン」(1988) RAIN MAN

 

今年で入社20年目のA氏は、最初の数年で各部署をたらい回しにされ、他に任せられる仕事が無くなってしまい、主に電話番と雑用係としての辞令が出て、現在の部署に配属され、かれこれ15年近くになる。

自分も入社当時には、A氏に仕事の基礎的なことを教わった記憶があるが、最初の印象としてはおしゃべり好きなおじさんというだけで、特別怪しい雰囲気は感じられなかった。

しかし日が経つにつれて、周囲のA氏に対する態度とA氏の言動を見ているうちに、何となく察することができた。

 

『一度言ったはずですけどね』

A氏に見下されるように言われたのを今でも覚えている。

仕事をよく分かっていない人間から聞いたのだから、当然分かるはずはなかったのだが、そこは一応数ヵ月先輩のA氏を立て『すみませんが、もう一度教えて下さい』と頭を下げた記憶がある。

そして、その上下関係はそれほどかからない期間で逆転し、自分がその台詞を言う事になる。ただし、心の中で。

 

A氏が病院へ通うようになったのはつい二年位前のことで、年々おかしくなってくる言動に周囲から強く勧められ、やっと行ったという感じだった。

投薬とカウンセリングを受けに、現在も月二回ほど仕事を半日であがり通院しているのだが、一向に良くなる気配がない。

当時は抑うつ状態と診断されたらしいのだが、決してそれだけではない何かがあるはずだと、病院へ行ったらもっと自分をさらけ出せるように、自分の注意されたことをメモしてそれを医者に見てもらうようにと勧めた。

そんなA氏の奥さんが、娘の進学先とかさむ医療費を市に相談したところ、障害者手帳の申請をしてみたらと勧められ、障害者手帳獲得に向けて始動しだした。

ここまで、A氏本人の意思で行動したことは何一つもないと思う。

 

『そんなうまくいくはずがない』

『周囲に迷惑ばかりかけているあの人が、なんで優遇されなくちゃならないんだ?』

職場のみんなは口をそろえて言った。

普段の横柄な態度を見ている限り、ただの仕事ができない人であって、手帳など到底もらえる訳がないと思っていたからだ。

それが皆の予想を覆し、A氏は精神障害者保健福祉手帳を手に入れたのだ。

しかも二級。

詳しくは調べてみてもピンとこなかったが、とにかく常勤としてやっていくのは限りなく不可能に近いということと、一度現在の正職員を辞めてしまったら、手帳がある限りは他の職場で雇ってもらえない確率が非常に高いということだけは分かった。

 

現在職場には、A氏以外にも他部署に二人ほど障害者手帳を持つ人(等級は不明)が仕事をしているが、二人とも健常者と何が違うのだろうといった感じで、素直で話しも面白くて、真面目で一生懸命でと、非の打ち所がない。

 

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どうしてA氏だけ周囲から嫌われてしまうのだろう?

そう、思い当たる点は多々々々々々・・・あるからだ。

その代表的理由の一つはというと、女・子供を初め、A氏よりも入社が後で役職が付いていないような人物に対しては、とにかく人を見下してしまう癖がある。 

そして、A氏が勝手にランキングしたカースト制度で、A氏が自分よりも身分が下だと思った相手には、絶対日頃の憂さ晴らしであろうと思わせるような、理不尽で横柄な態度を取るのだ。

たちまちその噂は職場内を駆け巡り、A氏の評判はどん底になった。

その結果、『自分の立場もわきまえずに、どうしてあんな悪態をつくことができるんだ』と各部署からの苦情が相次ぎ、窮地に追いやられたA氏。 

 

しかし打って変わって、常に注意を受けているA氏所属(自分もいる)の部署内では、常にへいこらして汗をかいている。

そう、きちんと人を見て行動するという力があるのだ。

そういうことには頭が回るのに、なぜ仕事では失敗続きなのだろうと、それもまたみんなの反感を買う大きな理由になった。

 

しかしそんなA氏も、注意を受けるたびに一応は態度を改めようとしていたらしい。

その結果、職場内のいたるところで出会おうとも、10メートルは離れているだろうというところから立ち止まり、90度以上に深々と頭を下げ、こちらが通り過ぎるまでその体勢を崩さないといった、嫌味の塊のような挨拶をするという技を身に着けた。

しかも電話やお客さん応対では、九割がたは正しくないであろう過剰な謙譲語・尊敬語を恥ずかしげもなく口から吐き出し、怪訝そうな顔をする相手が見えると、慌てて他者が応対を変わるなんて言う事もしょっちゅうあった。

そして結局、『あいつはどこまで人をバカにする気だ!』と苦情やお叱りを受けることが多くなり、負のスパイラルから抜け出せなくなってしまったA氏だった。

 

それが毎日何回も怒られ続けることにより、感情が麻痺してしまったようで、いいのか悪いのか年を重ねるごとに図々しさが際立ってきてしまった。

 

そんな中、青天の霹靂が・・・

A氏の立場が日々劣悪になっていく中、人の気持ちを汲み取るのが苦手なA氏でも、さすがに居づらくなったと見えてとうとう退職宣言したのだ。

しかし、『ここを辞めたら家族【妻と小・中学生の女児(共に自閉症)】を養っていけるのか?』と、仏心を出して聞いてしまった上司。

自分達は『せっかくのチャンスをなぜ棒に振る』と半狂乱気味に訴えたのだが、取り越し苦労だった。

A氏はその思いやりのある上司の発言に対して、

『男に二言はありません』

とこの期に及んでまでも、場違いな雰囲気の言葉を吐いたのだった。

 

早速その言葉を聞いた職場の者達は、A氏の仕事(ほぼ雑用)はそれぞれが分担すれば何の問題もないなどと今後の見通しを話し合いながら、これからは余分な気苦労をせずに済むのだと皆安堵した。

だが、着々と退職の準備が進められているのだろうと思いきや、一向にその気配も感じられずA氏は普段通りにボーっと構えている。

 

『退職の日は決まったのですか?』

普段は必要以外、決して口を利かない自分が訪ねてみた。

すると、『いえ、辞めないことになりましたぁ』

と思わず耳を疑ってしまうような返事が。

その時その場に居合わせた者達全員が『はっ⁉』となった顔が今でも忘れられない。

 

もしかしたら精神科の先生に何か入れ知恵をされたのか?と疑いを持ち始める者もいたが、それにしても舌の根も乾かぬうちに退職宣言を撤回し、さらには何食わぬ顔で、『明日から一か月休みますぅ』と言ったA氏には、あきれて何も言い返せなかった。

一応は上層部に許可をもらった休暇ではあるのだが、何を食えばそんな発想ができるのだろうと、半ば脳内構造に興味を抱いてしまった自分。

どうせ職場の環境が居心地悪くなったために、辞めますとでも言えばコネクションパワーで自分の居心地が良くなるような環境を整えてくれるとでも思ったのか?

そんなことを勘ぐってしまうくらい、腹の中では何を考えているのか分からない男なのだった。

 

実は時々あるこの長期休暇。

職場に来て面倒を起こされるよりも、いないほうが安心ということで、どうぞお休みしてください的な感じの休暇なのだ。

そして、明らかに何かがおかしい当人は、そのことを周囲に指摘されるまでは自分の異常に気づかないという。

『皆に言われちゃったので休みますぅ』

あくまでも自分の責任ではないことをアピールしつつ、何食わぬ顔をして長期休暇に入るA氏だった。

 

障害があるとは重々承知の上だが、今まで上の方からは特別に面倒見てやってくれとか、優しく指導してやってくれとかの命令は一切ない。

もちろん、A氏をほったらかしにして、見て見ぬ振りをする職場の上層部が諸悪の根源だということは、ほとんどの職員、暗黙の了解だが。

いやしかし、言われなくたって最初のうちは皆優しかったさ。

それが、何回注意してもダメなA氏に嫌気がさし、巻き添えを食らうのはごめんだと皆黙々とフォローするようになっていった。

そしてA氏は自分の非を認める間もなく、訳も分からないうちに仕事が減らされてしまい、とうとう雑用係に。

 

それだって健常者と変わらないまともな給料をもらっているA氏になんだか腹が立ち、問いかけてみた。

『いつも急に長期休暇を取るようですが、職場のみんなに対して何か思うことはありますか?』

『いやぁ、特にぃ、何も思わないですぅ』

 

あまりにもあっけらかんとした無責任な言動に、みんなは我慢の限界だった。

精神障害者保健福祉手帳を手に入れてからは、さらに自分は優遇されているものだという勘違いも甚だしくなった。

人の気持ちが分からないとか、曖昧なニュアンスが分からないとかの特徴は聞いていたから多少は我慢できたのだが、部署から一歩外に出れば、自分より弱い立場の人を見つけては横柄な態度を取ったりと、人を見て言動を変えることが出来る質の悪いA氏に、なおさら嫌悪感を抱いてしまった。

ニコニコしながらたいして親しくもない相手に、平気で障害者手帳を貰ったと話しかけ、その相手はドン引きなのにそれすらも分からず話し続けるなど、とにかく鉄のような心臓を持つA氏。

しかしここまでくると、自分が正しい精神状態なのか、A氏が正しい精神状態なのか、もはや分かりかねる。

『もしかしたら自分の方が異常なのかもしれない』と周囲の者達を逆に不安に思わせてしまうA氏のトリック。

 

ついこの間の休憩時、普段はパソコンの前になど座ったことがないA氏が珍しく、キーボードを叩いていた。

何気なく目にとまったA氏が閲覧する画面。

一つもこそこそしている感じはない。

逆に見てくれといった感じで堂々としている。

目を疑い二度見をしたが間違いない、その画面にはパワーハラスメントという言葉が。

そして、◯◯法律事務所というホームページを見ていたのだ。

 

一体、何を考えているのだろう?

どうして自分の非を棚に上げて、パワハラなんてワードを検索するのだろう?

言っとくけど、こっちだって被害者だ!

まず、あなたにどう接すればよいのかを一から考え、一つの簡単な用事を頼む時だって分かりやすく工夫をして説明をしなくてはならないという手間と、さらには常識では当てはまらない心情をどうにか理解しようと努力している我々の気の使いようも、是非分かってもらいたいのだ。

あなたも嫌な思いをしていると思うが、こちらだって気を使いながら、本来はしなくてもいいプラスαを毎日こなしている。

あなたがこちらの気持ちを分からないように、こちらもあなたの本心は分かり兼ねる。

お互い様ってことで良くないですか?

だから、 少なくとも訴えるとか馬鹿な真似はやめてくれ。

 

そしてまた今日も、職場には何食わぬ顔をして、ボーッと突っ立っている彼がいるのだった。

 

※この話はあくまでも一個人の話です。決してこの話しに関係ない方たちを悪く言っているのではありません。

 

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