サヴァン症候群
知的障害や発達障害などのある人の中で、ごく特定の分野に限って天才的な能力を発揮する人のことをいう。症例によって異なり、同じ症例は二つとないともいわれている。
日本では画家の山下清もサヴァン症候群だったという。
男性に多く女性は稀で、言語や計算を司る大脳の左半球に損傷があることが指摘されている。左脳が損傷を受けると右脳がそれを補償しようと発達して、右脳が優位になり機能が際立って発揮され、サヴァンの才能が現れるのではないかといわれている。
スティーブン・ウィルシャー
1974年イギリスのロンドン生まれ。
幼い頃は発音障害をかかえた無口な子であり、3歳のときに自閉症と診断された。
5歳のときに通わされたロンドンのスクールで絵を書くことに興味を示し、コミュニケーションも美術を通じて行われるようになった。教師たちの奨励が助けともなり、スティーブンはこの頃に会話を覚えた。
映像記憶
スティーブンは一度みたものは細部まで正確に絵に起こすことができる。
約30年も前に行ったパリの凱旋門を、記憶だけを頼りに描いたものは、なんと、門の上部に並ぶ装飾の数までも同じだったのだ。このスティーブンの特殊な記憶を、ケンブリッジ大学のバロンコーエン教授は、『直観像記憶』だと分析した。
直観像記憶
通常風景の記憶は、長い時間が経つと脳の中で抽象化され忘れ去られていくが、スティーブンの場合、その記憶が脳内に全て正確にストックされ、いつでも取り出すことが可能だという。
ウェストミンスター宮殿


香港スカイライン


※角度が若干違いますが写真と並べてみました。
パノラマシリーズ
スティーブンは世界各地を巡り、ヘリコプターでわずかな時間周遊した後、記憶力だけでその都市の詳細なパノラマ図を人前で描くというパフォーマンスを行っている。
日本
2005年に東京で、約10メートルの巨大なパノラマ図を描きあげた。
出典:https://www.stephenwiltshire.co.uk/Tokyo_Panorama_by_Stephen_Wiltshire.aspx
ニューヨーク
2009年には、ニューヨークを20分間ヘリコプターで周遊した記憶を、長さ5.5メートルの巨大キャンパスに、まるで写真のような全景図を描き上げた。細部にわたって正確に描かれているこの全景図は、12本のペンだけを使い、約1週間で完成させた。
VRソフト『Tilt Brush』で自動車を再現
日産のマイクラの形状を1分だけで記憶し、これまで使ったことのないGoogleのVRお絵描きソフト『Tilt Brush』で立体的に再現する3Dペインティングに挑戦した。
終盤では幅も高さも一緒なのが判るので、まさに鳥肌もの。
しかし、車一台くらいなら、普段は街全体を相手にしているスティーブンにとって、簡単すぎたのかもしれない。
マネしろって言われたってできないよ・・・
仮にね、写真を見ながら書けって言われたってここまで忠実に再現できないし、写真の上にトレース紙を置いて写せって言われたってできないよ。何より根気が続かん。ビル一つ描くので精一杯って感じ。
素晴らしい才能、本当に羨ましい。
ただし、スティーブンは一度記憶したものを、本人がどう頑張っても頭から削除することができない。要は、過去の悲しい出来事、衝撃的な光景などを忘れたくても忘れることができないということだ。また、日常生活の中では、間違えて覚えたことも記憶されて、ずっと頭に残り続けてしまう。
超越した能力を持った代償に『忘れる記憶』を奪われた彼ら。
かたや、若年性認知症なんじゃないかと日々心配になる自分。
比べるのは大変申し訳ないが、天才は彼らに任せることとして、自分は凡才を全うしよう。